アルデバラン

一般社団法人アルデバラン

認知症は「脳だけの病気」ではないのかもしれない

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約7分

― 食生活と認知症の関係を考える ―

先日、YouTubeで「The REAL Reason Dementia Is Skyrocketing(認知症が急増している本当の理由)」という興味深い動画を見ました。

出演しているのは、糖や代謝について長年研究しているRobert Lustig医師です。この動画では、砂糖や人工甘味料、超加工食品と私たちの代謝、そして認知症との関係について語られていました。

認知症というと、私たちはどうしても「脳の病気」と考えます。もちろん、認知症では脳にさまざまな変化が起こります。けれども私は長年、高齢者や認知症の方々のケアに携わる中で、認知症は「脳だけを見ていても理解できない」と感じてきました。

その人が何を食べ、どのように身体を動かし、どのように眠り、どんな病気を抱え、そして誰とどのようにつながりながら暮らしているのか。人間の身体と暮らしは、すべてつながっています。

今回の動画を見ながら、改めて「認知症と食生活」について考えてみました。

食生活の乱れが、なぜ脳に影響するのか

動画の中では、食生活と認知機能との関係について、おおよそ次のような流れで説明されています。

食生活の乱れ
↓
代謝異常・慢性炎症・活性酸素の増加
↓
ミトコンドリア機能の低下
↓
脳のエネルギー不足
↓
神経細胞の働きの低下
↓
認知機能の低下

ここで重要になるのが「ミトコンドリア」です。

ミトコンドリアは、私たちの細胞の中でATPというエネルギーを作っています。心臓を動かすのも、筋肉を動かすのも、そして脳が考えたり記憶したりするのも、細胞がエネルギーを作り出せるからこそです。

ところが、代謝異常や酸化ストレスなどによってミトコンドリアの働きが低下すると、神経細胞が必要なエネルギーを十分に得られなくなる可能性があります。

つまり、認知症を考えるとき、「脳に何が起きているのか」だけではなく、「脳がきちんと働くためのエネルギーを、身体は作り出せているのか」という視点も大切なのです。

「脳のインスリン抵抗性」という考え方

もう一つ、近年注目されているのが「脳のインスリン抵抗性」です。

インスリンというと、「血糖値を下げるホルモン」というイメージが強いと思います。しかし、インスリンは脳でも重要な役割を持っていて、神経細胞のエネルギー利用や記憶、学習などにも関係しています。

糖尿病や代謝異常が続くと、身体だけではなく、脳でもインスリンが十分に働きにくくなる可能性があります。すると、神経細胞のエネルギー利用やさまざまな細胞機能に影響が生じ、アルツハイマー病の病態に関係するのではないかと研究されています。

こうした背景から、アルツハイマー病を「3型糖尿病」と表現する研究者もいます。ただし、ここは少し注意が必要です。「3型糖尿病」は正式な病名ではありません。また、「糖尿病になったらアルツハイマー病になる」という意味でもありません。

アルツハイマー病の複雑な仕組みの一部を、「インスリン抵抗性や代謝」という視点から説明しようとする考え方の一つです。

超加工食品と認知症

動画では、超加工食品についても取り上げられています。

超加工食品とは、一般的には、さまざまな加工工程を経て、糖分、脂質、塩分、香料、乳化剤などを含むことの多い食品を指します。清涼飲料、菓子類、一部の加工肉やインスタント食品など、現代の生活には非常に身近なものです。

だからといって、「加工食品を食べたら認知症になる」という単純な話ではありません。しかし、超加工食品の摂取量が多い食生活と認知機能低下や認知症との関連を報告する研究は増えてきています。

背景として考えられているのが、肥満や糖尿病、高血圧などの代謝・血管系の問題、慢性炎症、酸化ストレスなどです。私たちが毎日食べているものは、単に体重だけに影響しているのではありません。長い年月をかけて、血管や代謝、そして脳にも影響している可能性があるのです。

人工甘味料なら安心なのか

ここも、この動画を見ていて興味深かったところです。砂糖を控えるために、「砂糖ではなく人工甘味料なら大丈夫」と考える人も少なくありません。しかし動画では、一部の人工甘味料についても、代謝や酸化ストレスなどへの影響の可能性が指摘されています。ただし、この点については慎重に考える必要があります。

現時点で、「人工甘味料を摂取すると認知症になる」と証明されているわけではありません。人工甘味料の種類や摂取量によっても影響は異なり、研究結果にも幅があります。ですから、私は「砂糖か人工甘味料か」という二者択一より、「そもそも日常的に強い甘さを求める食生活になっていないだろうか」と考えてみることのほうが大切なのではないかと思います。

医学的には、どこまで分かっているのか

ここはとても重要です。

動画のタイトルは、「The REAL Reason Dementia Is Skyrocketing」
(認知症が急増している本当の理由)
という、とても強い表現になっています。

しかし医学的には、認知症が増えている理由を「食生活だけ」で説明することはできません。世界的な高齢化や長寿化も大きな要因です。また、認知症には、高血圧、糖尿病、運動不足、喫煙、難聴、睡眠、社会的孤立など、さまざまな要因が関係しています。

つまり、

・人工甘味料が認知症を直接引き起こす
・超加工食品だけが認知症増加の原因である
・活性酸素やATPの低下だけですべて説明できる

といったところまで医学的に証明されているわけではありません。

一方で、「食生活や代謝の健康が、将来の認知症リスクと関係している」という大きな方向性については、多くの研究が積み重なってきています。だからこそ、「怖い食品を探して排除する」という発想ではなく、毎日の暮らし全体を見直すことが大切なのだと思います。

では、私たちは何をすればいいのでしょう

特別なことをする必要はありません。

例えば、

・水や無糖のお茶を基本にする
・野菜、豆類、魚、果物、全粒穀物などを意識して食べる
・菓子、清涼飲料、加工肉、インスタント食品などを「毎日の当たり前」にしない
・食べ過ぎや偏った食生活を避ける
・適度に身体を動かす
・十分な睡眠をとる
・血圧、血糖、コレステロールを適切に管理する
・人との交流や社会とのつながりを保つ

どれも、驚くような方法ではありません。

そして大切なのは、「これを食べてはいけない」「これは身体に悪い」と食事を恐れることではないと思います。美味しいものを食べることも、人と食卓を囲むことも、人生の大切な楽しみです。認知症予防のために人生の楽しみを失ってしまっては、本末転倒ではないでしょうか。

認知症を「脳だけの病気」にしない

私はこれまで、多くの認知症の方々と出会ってきました。そして認知症ケアについて考えるたびに思うことがあります。私たちが向き合っているのは、「認知症」という病気だけではありません。

一人の人間の暮らしそのものです。

食べること。

眠ること。

身体を動かすこと。

誰かと話すこと。

笑うこと。

好きなことを続けること。

そして、自分が大切にしてきたものを大切にしながら生きること。

こうした日々の営みは、認知症になってから大切になるのではありません。認知症になる前から、ずっと続いている「その人の人生」です。

「認知症にならないため」ではなく

認知症を完全に防ぐ方法は、まだ見つかっていません。それでも、毎日の食事や運動、睡眠、人とのつながりを大切にすることは、脳だけではなく、人生そのものを豊かにすることにつながります。

だから私は、

「認知症にならないために」ではなく、
「いつまでも自分らしく生きるために」。

今日の食事を少し考えてみる。

少し歩いてみる。

誰かと話してみる。

よく眠る。

そんな日々の小さな積み重ねを大切にしたいと思います。

それが結果として、未来の自分の脳と身体を守ることにもつながっていくのかもしれません。

参考動画
The Diary Of A CEO Clips
「The REAL Reason Dementia Is Skyrocketing」
Dr. Robert Lustig

※本記事は、動画で紹介されている考え方をもとに、認知症と食生活について考察したものです。特定の食品や人工甘味料が認知症を直接引き起こすことを示すものではありません。

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