今回から3回にわたり、世界的な幹細胞治療の権威である オルト教授(Prof. Dr. Eckhard Alt:https://en.wikipedia.org/wiki/Eckhard_Alt)による 自己脂肪由来幹細胞治療について、わかりやすくご紹介してまいります。
- 第1回では、そもそも幹細胞治療とは何か――その基本的な仕組みや特徴について解説します。
- 第2回では、オルト教授が開発した独自の技術、そして実際に治療の対象となる疾患や適応について、より具体的に掘り下げます。
- 第3回では、ドイツ・ミュンヘンのイサールクリニック(https://en.wikipedia.org/wiki/Isar_Klinikum)で実際に行われている治療の流れ、世界に広がるオルト教授の再生医療ネットワーク、そして日本との連携の取り組みについてご紹介します。
幹細胞治療を検討されている方、最先端の再生医療に興味のある方に、少しでもお役に立てる情報をお届けできれば幸いです。

<オルト教授とクリニックが紹介されたニュース記事>
はじめに ― 治す医療から「再生する医療」へ
現代医療はこの数十年で飛躍的な発展を遂げてきました。しかし依然として多くの疾患では、「壊れた組織をもとに戻す」「失われた機能を回復させる」といった治療は限られています。
その中で今、世界の医学界が大きな期待を寄せている分野が 再生医療(Regenerative Medicine) です。
- 失った機能を再生させる
- 傷んだ組織そのものを修復する
まさに 「治す医療」から「再生する医療」へ ― 新たな時代の医療が静かに、そして確実に広がりつつあります。
本シリーズでは、ドイツの名医 オルト教授(Prof. Dr. Eckhard Alt) が長年研究と臨床を重ねてきた 自己脂肪由来幹細胞治療 を中心に、その魅力と可能性を3回にわたりお届けしてまいります。
再生医療とは?
再生医療とは、人間の体内に備わる「自己修復力」を活用し、損傷した組織や臓器を再生・修復していく治療法です。
たとえば骨折が治る、皮膚が再生する、肝臓が部分切除後に元に戻る——
これらは私たちの体が本来持つ再生能力によるものです。再生医療はこの自然治癒力を医学の力でさらに引き出そうとする分野です。
その中心的な役割を果たすのが 幹細胞(Stem Cells) です。
幹細胞とは? 〜すべての細胞の「もと」になる細胞〜
幹細胞は、「自分を複製する能力(自己複製能)」と「他の細胞に分化する能力(多分化能)」を持つ特殊な細胞です。
つまり、幹細胞は骨・筋肉・血管・神経・皮膚など様々な細胞へと変化することができます。
代表的な幹細胞には以下の種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
胚性幹細胞(ES細胞) | 倫理的課題が大きい |
人工多能性幹細胞(iPS細胞) | 日本の山中教授らの発見で世界的に有名 |
造血幹細胞 | 主に血液疾患の治療に使われる |
自己脂肪由来幹細胞(ADSCs) | 比較的安全で汎用性が高い |
中でも、オルト教授が長年研究・臨床応用を進めてきたのが 自己脂肪由来幹細胞(ADSCs = Adipose-Derived Stem Cells) です。
自己脂肪由来幹細胞がなぜ注目されているのか
近年、世界の再生医療界で最も実用段階に入っているのが 自己脂肪由来幹細胞 を使った治療です。その大きな特徴は以下の通りです。
① 採取が安全・簡便
脂肪は体内に豊富に存在し、短時間の脂肪吸引で安全に採取できます。患者本人の脂肪を使うため拒絶反応が起きにくいことも大きな利点です。
② 多能性が高い
脂肪から得られる幹細胞は、骨、軟骨、血管、神経など様々な組織に変化することができます。実際、整形外科、心臓病、神経疾患など幅広く応用されています。
③ 免疫抑制が不要
自己の細胞を使用するため、移植拒否や免疫抑制剤が不要です。長期的なリスクも低減できます。
④ 倫理的問題が少ない
胚性幹細胞や臓器移植と違い、倫理的な問題がほとんどありません。これも臨床応用が進んでいる大きな理由です。
オルト教授の幹細胞治療が特別な理由
ドイツ・ミュンヘンにある イサールクリニック(Isar Klinikum) において、オルト教授は独自の幹細胞抽出技術を確立しました。
特徴は以下の通りです。
- 特許技術「Matrase酵素法」で高純度な幹細胞を迅速に抽出
- 治療プロセスは2時間程度で完了
- 入院期間も短く、患者の身体的負担が少ない
- 患者個別の疾患に合わせて幹細胞投与法を工夫
さらに、オルト教授は 自己脂肪由来幹細胞の「再生」「抗炎症」「免疫調整」 という多面的な可能性を活かし、多くの難治性疾患に挑んでいます。
日本ではまだ知られていない治療の可能性
実はこの治療法、日本国内ではまだ一般的ではありません。
日本でもiPS細胞研究は進んでいますが、自己脂肪由来幹細胞は医療現場での利用は限定的です。
一方、ドイツや欧米では臨床現場で広く応用が始まっており、今後ますます国際医療の選択肢として注目されるでしょう。
今回のまとめ
*オルト教授は独自の技術で幹細胞治療を安全かつ効率的に実現している
*再生医療は「修復できなかった病気に新しい光」を当てる最前線の医療分野
*幹細胞の中でも自己脂肪由来幹細胞は特に実用性が高い

次回予告(第2回)
『自己脂肪由来幹細胞の可能性 ― 関節・神経・心臓・糖尿病・ED・乳房再建など幅広い適応疾患』
実際にどのような病気が治療対象となっているのか?
次回は、より具体的な適応疾患について詳しくご紹介していきます。