はじめに
台湾滞在期間中(3月~4月)、台北市にある大病院にて、知人のお母様の外来受診に付き添う機会がありました。台湾の医療制度や外来受診の流れなどを体験することができましたのでご紹介します。
台湾の保険制度
台湾は日本と同様に国民健康保険(NHI)制度があります。簡単にご説明します。
台湾の国民健康保険(National Health Insurance, NHI)は、全ての国民が加入する社会保険制度で、1995年に導入されました。この制度は、政府が管理し、国民に手頃な価格で包括的な医療サービスを提供することを目的としています。NHIは、健康保険基金を通じて運営されており、被保険者からの保険料、政府の補助金、及び事業主からの拠出金によって賄われています。
NHI制度は、病院での診療費、薬品費、手術費、検査費など、広範な医療サービスをカバーしています。被保険者は、診察や治療を受ける際に一部の自己負担金を支払いますが、その額は比較的低く抑えられています。
風邪をひいて一般的な診療所で診察を受け、薬を処方された場合の総費用は、診察料と薬剤費を合わせて約250~500台湾ドル(約850~1,700円)程度だそうです。
診療受付~診察待ちまでの流れ
病院に到着すると、知人のお母様は前回の来院時に予約を取っていたため、直接目的の診療科目の待合コーナーに向かいました。
院内の各診療科入り口の横に、受付のマシーンが設置されていました。写真のように診察券を挿入することで順番が表示され受診受付が終了です。特に印象的だったのは、高齢者に対するファストパス制度です。例えば、通常の患者様が10人並んでいる場合でも、その合間、合間に高齢者の方(病院によって年齢が違うとのこと。この病院は80歳以上でした。)が優先的に診察を受けられるようになっています。
診察の様子
お母様が到着して10分ほど待った後、看護師さんが声をかけてくれました。診察室の中まで一緒に付き添うことができました。先生との会話は理解できなかったものの、お母様と先生が笑顔で話している様子が見られました。
診察は5分程度で終了しました。先生は忙しそうにパソコンで状況を入力し、短時間で診療を終えたいという雰囲気が感じられました。外来ではたくさんの患者様が待っています。これは日本と同じような状況ですね。診察が終わると、看護師さんがすぐに次の患者を呼び込むという効率的な流れでした。
内服薬の受け取りと会計の流れ
診察後、処方された薬は病院内の薬局で受け取ることができます。先生がパソコン入力した薬の情報が薬局に直接送られるので、患者様は薬局さほど待つことなく薬を受け取ることができます。
お会計はお会計マシンで行います。これは日本でも導入が進められてきていますね。高齢者の方は機械が苦手の方もいらっしゃいますので、専用の会計窓口も設けられており優先して会計が受けられるシステムになっていました。
病院の待ち時間
台湾の病院における外来の待ち時間は、比較的短いとされています。具体的には、診察の待ち時間は平均して15分から20分程度。処方箋の受け取りにかかる待ち時間は約25分から30分だそうです。今回の付き添いでも待ち時間は10分程度でした。この短さは、効率的な電子カルテシステムや効果的な患者スケジューリングの結果だそうです。
日本の大学病院では1時間から2時間程度かかることが一般的と言われています。ある研究によれば、眼科の外来での平均待ち時間は245分とか、、、うんざりしますね。
おわりに
日本と同じように台湾は急速に高齢化が進んでいる国の一つです。2018年に「高齢社会」となり、65歳以上の人口が全体の14%を超えました。2025年までには「超高齢社会」となり、65歳以上の人口が20%を超えると予測されています。このような事情もあり、外来にいらっしゃる患者様は高齢者が目立ちました。
台湾の医療制度や病院の運営方法は日本と多くの共通点がありますが、高齢者への配慮やファストパス制度など、独自の工夫も見られました。この体験を通じて、台湾と日本の医療制度の違いや共通点を改めて実感することができました。