前回は「再生医療」そして「自己脂肪由来幹細胞(ADSCs)」の基本についてご紹介しました。
今回はさらに踏み込んで、実際にどんな疾患に応用されているのか? について具体的に解説していきます。
自己脂肪由来幹細胞は、単なる細胞の材料ではありません。
幹細胞が放出する成長因子やサイトカインなどが、傷んだ組織の修復を促し、炎症を抑え、免疫を整え、細胞の老化を防ぎます。これにより幅広い疾患に効果が期待されているのです。
① 整形外科領域 ― 関節や靭帯の修復に期待
特に実用化が進んでいるのが 関節疾患 です。
▷ 変形性膝関節症(膝の軟骨損傷)
- 日本でも患者が急増している疾患です。軟骨は自然にはほとんど再生しませんが、幹細胞は傷んだ軟骨組織の修復を助ける可能性が高く、多くの症例で歩行改善や疼痛緩和が報告されています。
▷ 肩・股関節・足首の関節障害
- スポーツ障害や老化に伴う関節疾患にも適応。
- 高齢者だけでなく、アスリートの治療にも応用されています。
▷ 靭帯・腱の損傷
- 前十字靭帯損傷、アキレス腱断裂などで手術と併用することで回復力向上が期待されます。
【ポイント】
切除や人工関節置換ではなく、自分の組織を「再生」させるアプローチが可能になることが大きな特徴です。
② 神経疾患領域 ― 脳・脊髄・末梢神経にも挑戦
神経は本来再生が難しい組織ですが、幹細胞の抗炎症・神経保護作用によって、神経変性疾患 にも応用が始まっています。
▷ パーキンソン病
- ドーパミン神経の再生を助ける可能性。
- 症状の進行抑制やQOL改善が期待されています。
▷ アルツハイマー病・認知症
- 脳内の慢性炎症や神経細胞死を抑える可能性があり、海外で治験が進行中。
▷ 脳梗塞後遺症
- 片麻痺や言語障害に対し、幹細胞投与により可塑性が促されると報告されています。
▷ 脊髄損傷
- 完全損傷の回復は困難ですが、部分損傷での残存機能改善の可能性が期待されています。
【ポイント】
オルト教授は神経領域への応用にも積極的で、ドイツ国内外の大学病院と共同研究を進めています。
③ 循環器疾患 ― 心筋梗塞後の再生治療
心筋梗塞で死滅した心筋細胞は原則再生しません。
自己脂肪由来幹細胞は血管新生促進・抗線維化・抗炎症作用によって、心臓組織の修復 を目指しています。
▷ 慢性心不全・虚血性心疾患
- 幹細胞を心臓に投与することで心機能回復が報告されている症例もあります。
【ポイント】
心臓外科の難症例にも新たな選択肢を提示する治療法として注目されています。
④ 糖尿病・代謝疾患 ― 膵臓機能の再生
糖尿病は日本でも患者数が非常に多い疾患です。
▷ 2型糖尿病
- インスリン分泌障害・インスリン抵抗性改善の可能性。
- 膵臓内のインスリン産生細胞(β細胞)の保護や再生に働きかける研究が進んでいます。
▷ 糖尿病性神経障害・壊疽の予防
- 幹細胞の血管新生作用が末梢循環障害の予防に役立つとされています。
【ポイント】
糖尿病合併症を根本から予防できる可能性も期待されています。
⑤ ED(勃起不全)・泌尿器疾患
男性にとってQOLを左右する領域でも再生医療は大きな可能性を持っています。
- 海綿体内皮細胞の再生 による血流改善
- 神経障害型EDの改善
- 前立腺手術後の後遺症改善
オルト教授のクリニックではEDに対する幹細胞治療も確立されており、多くの欧州患者が訪れています。
⑥ 乳房再建・形成外科領域
自己脂肪由来幹細胞は脂肪移植とも非常に相性が良く、美容・形成領域でも応用が進んでいます。
▷ 乳房再建(乳がん術後)
- 脂肪吸引と幹細胞を組み合わせることで、より自然で持続的な再建が可能に。
▷ 美容医療
- 皮膚の若返り、創傷治癒促進、脂肪注入後の生着率向上などに活用されています。
【ポイント】
オルト教授は形成外科分野でも国際的評価を得ており、美容目的だけでなく医療的再建でも大きな成果を挙げています。
世界の著名人も治療を受けている
実際にオルト教授の治療には世界各国から多くの著名人が訪れています。
例えば、ゴルフ界のレジェンド・ジャック・ニクラウス氏 も幹細胞治療を受けたことで知られています。
今回のまとめ
- 自己脂肪由来幹細胞は非常に幅広い疾患に応用可能
- 関節、神経、心臓、糖尿病、ED、形成外科まで多領域に対応
- 治療法は日々進化し、多くの患者が新たな選択肢を得始めている
次回予告(第3回・最終回)
『ドイツ・イサールクリニック治療の流れとオルト教授のグローバル活動』
次回は、実際にイサールクリニックで治療を受けるまでの流れや、オルト教授が進める国際的な再生医療ネットワークについて詳しくお届けします。
