不思議いっぱい!からだのしくみを知ろう ― 解剖生理学入門
次のようなテーマを一つひとつ掘り下げていきます。
- 呼吸のふしぎ ― 酸素と二酸化炭素の物語
- 心臓と血管 ― 24時間働き続けるポンプ
- 消化の冒険 ― 食べ物がエネルギーになるまで
- 脳と神経 ― 私たちの「司令塔」
- 交感神経と副交感神経 ― 自律神経のバランス
- 筋肉と骨 ― 体を動かす精密な機械
- 尿ができるまで ― 腎臓の小さなろ過装置
- ホルモンと内分泌 ― 体内のメッセンジャー
- 免疫と防御 ― 体を守る見えない軍隊
- まとめ編:体を知ることは自分を大切にすること
今回はその第2回、「心臓と血管 ― 24時間働き続けるポンプ」 についてです。
眠っている間も働き続ける心臓
胸の奥で「トクン、トクン」と鼓動を刻む心臓。
私たちが眠っているときも、映画を見て笑っているときも、心臓は一瞬たりとも休むことなく血液を全身に送り出し続けています。
その働きは驚くほどパワフルです。心臓は一日におよそ10万回拍動し、1分間で約5リットル、一日にすると7000リットル近い血液を循環させています。これは家庭用のお風呂を毎日何十杯も満たすほどの量です。小さな臓器がこれほどまでに働き続けていると考えると、本当に感謝したくなりますね。
心臓の仕組み ― 四つの部屋で作られたポンプ
心臓は「右心房・右心室・左心房・左心室」という四つの部屋でできています。
右側は肺へ血液を送り出す役割、左側は全身へ血液を届ける役割を持っています。
血液の流れを簡単に追ってみましょう。
- 体から戻ってきた酸素の少ない血液が右心房に入る
- 右心室へ送り出され、肺へ向かう
- 肺で酸素をたっぷり取り込んで左心房に戻る
- 左心室から全身へ送り出される
まるで二重のポンプが交互に動き、酸素と二酸化炭素を効率よく入れ替えているのです。

血管は「命の道路網」
心臓から送り出された血液は、体の隅々まで張り巡らされた血管を通って運ばれます。血管の種類は大きく分けて3つ。
- 動脈 … 酸素を含んだ血液を心臓から全身へ運ぶ「高速道路」
- 静脈 … 役目を終えた血液を心臓に戻す「帰り道」
- 毛細血管 … 血液と細胞が直接やりとりをする「細い路地」
毛細血管まで含めると、その長さはおよそ10万キロメートル。なんと地球を約2周半もする長さです。自分の体の中にそれほど長い「道路網」があると考えると、驚かされますね。
酸素と栄養を届ける循環
心臓と血管の最大の使命は「酸素と栄養を全身に届けること」です。
その仕組みは大きく二つに分かれます。
- 肺循環 … 酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するために肺と心臓を行き来するルート。
- 体循環 … 酸素と栄養を全身に配達するルート。
酸素は赤血球のヘモグロビンに乗って運ばれ、細胞に渡されます。代わりに二酸化炭素や老廃物を受け取って、再び心臓へ戻る。この絶え間ない循環こそが「生きるリズム」なのです。
血圧と脈拍 ― 数字が教えてくれること
健康診断で必ず測る「血圧」。これは血液が血管の壁を押す力を数値化したものです。血圧が高いと血管への負担が大きくなり、動脈硬化や心臓病のリスクが高まります。逆に低すぎてもめまいや立ちくらみを引き起こすことがあります。
一方「脈拍」は心臓の鼓動の速さを示します。安静時には1分間に60〜80回程度が一般的。スポーツ選手などでは50回前後ということもあります。手首や首に指を当てて脈を測ると、心臓がしっかり働いていることを実感できるでしょう。
心臓を守る生活習慣
心臓はタフですが、毎日の生活の積み重ねによって大きく影響を受けます。心臓を元気に保つためのポイントを整理してみましょう。
- 食事:塩分の摂りすぎは血圧上昇につながります。野菜や魚を意識的にとり、バランスのよい食事を心がけましょう。
- 運動:ウォーキングや軽い有酸素運動は心臓の働きを助け、血管をしなやかに保ちます。
- 睡眠:質のよい睡眠は心臓を休ませる時間。夜更かしや不規則な生活は負担になります。
- ストレス:強いストレスは交感神経を刺激し、血圧や心拍数を上げます。深呼吸や趣味の時間で心を落ち着けましょう。
日々のちょっとした意識が、将来の大きな病気予防につながります。
まとめ:心臓は人生の相棒
心臓と血管は、休むことなく私たちの命を支えてくれる「人生の相棒」です。
体の中にこんなに力強く、しかも繊細に働くシステムがあることを知ると、なんだか自分自身をもっと大切にしたくなりますよね。
「ドキドキする」「胸が高鳴る」といった表現は、心臓の働きそのもの。感情と体のつながりを感じる瞬間でもあります。心臓の鼓動は、生きていることを教えてくれるリズムなのです。
なお、この解剖生理学シリーズは連続ではなく、他の医療・福祉や生活に役立つテーマの記事も挟みながら進めていきます。そのため「ちょっと間が空いたけれど、次のテーマがきた!」という感覚で、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。