アルデバラン

一般社団法人アルデバラン

記者会見を終えて ~発達障害の未来を拓く~

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約4分

2月27日、厚生労働省記者会見室にて、「発達障害支援の現状と今後の展望」について記者会見を開催しました。

発達障害支援の現状と課題

近年、日本における発達障害の認知度は向上し、法整備や教育支援の充実が進められてきました。しかし、現場では依然として多くの課題が残っています。特に、以下の4点が大きな課題として挙げられます。

  1. 診断・療育の遅れ
    発達障害の診断を受けるまでに時間がかかり、適切な支援を受ける機会を逃してしまうケースが多くあります。特に、早期療育が求められるにもかかわらず、待機期間が長いため、子どもの成長に影響を与える可能性が指摘されています。
  2. 教育現場での専門職の不足
    特別支援教育に関わる専門職が不足しており、学校現場で発達障害の子どもたちに適切な支援が行き届いていません。教員の負担が大きく、一人ひとりに寄り添った支援が難しい状況です。
  3. 成人期のサポート不足
    子ども時代には支援が提供されても、成人期に入ると支援の枠組みが減少し、社会参加が困難になるケースが多くあります。特に、就労支援や生活サポートが不足していることが大きな問題となっています。
  4. 地域間格差の拡大
    発達障害支援のサービスは自治体によって異なり、住む地域によって受けられる支援に大きな差が生じています。どの地域に住んでいても、適切な支援が受けられる体制の整備が求められます。

これらの課題を解決するためには、教育・医療・福祉の連携強化が必要であり、具体的な政策提言が求められます。

海外の先進的な取り組み

記者会見では、海外の発達障害支援の取り組みについても紹介しました。アメリカ、イギリス、フランス、イタリアでは、発達障害のある子どもたちがより良い環境で支援を受けられる仕組みが整っています。

特に、アメリカでは「障害者教育法(IDEA)」により、個別教育計画(IEP)が義務付けられ、特別支援が充実 しています。また、イギリスでは特別支援コーディネーター(SENCO) が配置され、学校と福祉機関の連携が進んでいます。

フランスでは、「学業補助員(AESH)」を導入し、教育と医療が密接に連携した支援体制 を確立しています。さらに、イタリアでは「インクルーシブ教育の完全実施」が特徴で、発達障害児が通常学級で学ぶ環境を整えています。

これらの取り組みを参考に、日本でも、発達障害の子どもや成人が継続的に支援を受けられる制度の構築が急務です。

リアン訪問看護ステーションの取り組み

私は、リアン訪問看護ステーションにおいて、日本ではまだ数少ない発達障害に特化した訪問看護を提供しています。発達障害の特性を持つ方々に対し、一律の支援ではなく、感覚統合アプローチや行動分析に基づいた支援 を行っています。

具体的には、以下の専門職が連携して包括的なサポートを提供しています。

  • 作業療法士(OT):感覚統合療法を活用し、日常生活動作の向上を支援
  • 理学療法士(PT):発達の遅れや身体機能の課題を持つ子どもに対し、姿勢・バランス・筋力強化の指導
  • 言語療法士(ST):吃音や言語発達の遅れをサポートし、コミュニケーション能力の向上を促進

未来への展望

発達障害支援の今後について、私は次の3つの視点から展望を述べました。

  1. 発達障害支援の持続可能な体制の構築
    一時的なプロジェクトではなく、行政・教育機関・医療機関が連携し、継続的な支援が可能な仕組みを作る必要があります。また、現在、産学連携のもとでeラーニングシステムの構築を進めており、発達障害支援に関する専門知識を広く普及させることを目指しています。
  2. 感覚統合アプローチの普及と保険適用の推進
    カリフォルニアのように、日本でも感覚統合療法が適切に提供される体制を整え、保険適用の可能性を広げていきます。
  3. 社会参加の促進と就労支援の強化
    企業や自治体と連携し、発達障害のある方々が安心して働ける環境をつくることを目指します。

今回の記者会見が、発達障害支援の未来を考える契機となり、多くの方々と共にこの課題に取り組んでいく第一歩となることを願っています。

今後もこのブログにて私たちの活動を報告していきます。

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