アルデバラン

一般社団法人アルデバラン

自閉症 ~感覚統合を知ろう~

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約6分

「自閉症」という言葉を耳にしたとき、一般的には「コミュニケーションの困難さ」や「社会的な課題」といった特徴が思い浮かぶかもしれません。しかし、自閉症の特徴はそれだけではありません。その中でも、見過ごされがちな側面が「感覚統合」に関する課題です。

感覚統合の問題は、自閉症の方々の生活の質に深く関わっています。適切な支援があれば、日常生活の困難を軽減し、より充実した生活を送ることが可能です。本記事では、感覚統合の基本概念、自閉症の方々にどのような影響を与えるのか、そしてどのようにサポートできるのかに触れたいと思います。


感覚統合とは?

感覚統合とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感に加え、体の位置や動きを感じる「前庭覚」や「固有受容覚」から得られる情報を、脳が適切に処理し統合する能力を指します。この統合がうまく働くことで、私たちは日常生活で必要な動作や判断をスムーズに行うことができます。

たとえば、以下のような行動が感覚統合によるものです:

  • 目で見た物体を手で掴む。
  • 道路を渡る際に車の音を聞いて立ち止まる。
  • 体のバランスをとりながら階段を登る。

感覚統合が正常に機能している人は、これらの動作を無意識のうちに行っています。しかし、自閉症の方々の中には、感覚統合がスムーズに行われず、感覚処理に課題を抱える方がいます。これが「感覚処理の異常」と呼ばれる状態で、日常生活や社会生活にさまざまな影響を及ぼします。


感覚統合と自閉症

感覚統合の課題は、自閉症の方々が直面する困難の中核を成しています。これを正しく理解するために、3つの主要な側面を以下に挙げます。

1. 過敏な感覚

自閉症の方々には、特定の感覚に対して非常に敏感な方がいます。これを「感覚過敏」と言います。感覚過敏は、外部からの刺激を過剰に感じるため、本人にとって大きなストレスや不快感を引き起こします。

  • 視覚過敏:蛍光灯のちらつきや、日差しが眩しすぎると感じる場合があります。例えば、教室の明るい照明が原因で集中できない子どもがいることがあります。
  • 聴覚過敏:雑音や突然の大きな音が苦手です。電車のブレーキ音や花火の音が恐怖感を引き起こすこともあります。
  • 触覚過敏:特定の衣服の素材やタグが肌に触れるだけで不快感を覚えます。これにより、特定の服を避ける子どももいます。

2. 感覚鈍麻

一方で、感覚への反応が鈍い「感覚鈍麻」の方もいます。この場合、外部刺激に気づきにくく、適切な反応ができないことがあります。

  • 聴覚鈍麻:呼びかけに反応せず、「無視されている」と誤解されることがあります。
  • 触覚鈍麻:転倒しても泣かず、火傷に気づかない場合があります。このため、周囲が危険に気づきやすい環境を整えることが重要です。

3. 感覚刺激の追求

特定の感覚を求める行動を示すこともあります。これを「感覚的な追求」と言い、本人にとって重要な自己調整の手段です。

  • 前庭覚(*1)の追求:ジャンプや回転を繰り返すことで、体のバランス感覚を調整しています。
  • 固有受容覚(*2)の追求:重い物を持ち上げたり、押したりする動作を好みます。これにより、筋肉や関節への刺激を求めています。

*1前庭覚:体のバランスや位置を感じる感覚です。この感覚を通じて、私たちは歩いたり、立ち     上がったりする際の安定性を保つことができます。前庭覚の課題を持つ方では、以下のような行動が見られます

  • 過剰反応:車の揺れや階段の上り下りに強い不快感を覚える。
  • 低反応:揺れる感覚を求めてブランコや回転運動を好む。

*2固有受容覚:筋肉や関節の感覚を通じて体の位置や力加減を把握する能力です。この感覚が正常に機能することで、適切な力加減で物を持つことができます。課題を持つ場合、以下のような特徴が見られます

  • 適切な力加減が分からないため、物を壊してしまう。
  • 他者との距離感がつかめず、衝突する。

感覚統合の課題が生活に与える影響

感覚統合の課題は、学校や職場などの刺激が多い環境で特に顕著に現れます。たとえば、感覚過敏のある方が教室の雑音に耐えられない場合、学習への集中力が低下し、自己肯定感の低下につながることもあります。また、感覚鈍麻がある場合、危険な状況に気づかず、周囲が目を配る必要があります。


感覚統合のサポート方法

1. 環境の調整

感覚過敏や感覚鈍麻を持つ方には、環境の調整が重要です。

  • 光の調整:視覚過敏の方には、柔らかな照明やサングラスの利用が効果的です。
  • 音の調整:聴覚過敏の方には、静かな場所やノイズキャンセリングヘッドホンを用意します。
  • 触覚の配慮:触覚過敏の方には、肌触りの良い素材の衣服を選びます。

2. 感覚統合療法

感覚統合療法は、専門家が指導する療法で、感覚処理能力の改善を目指します。

  • 遊びを通じた療法:ブランコやバランスボードなどを活用し、感覚刺激を楽しく提供します。
  • 個別対応:療法士が一人ひとりの特性に合わせたプログラムを作成します。

3. 親や支援者の理解

  • 観察と記録:子どもの感覚的な反応を観察し、課題が生じる状況を把握します。
  • 情報共有:学校や支援者と課題について話し合い、連携して支援します。
  • 理解を深める:感覚統合に関する知識を学び、日常生活に取り入れます。

おわりに

感覚統合の課題は、自閉症の方々の生活に大きな影響を与えますが、適切な支援があれば、生活の質を向上させる可能性があります。感覚統合を正しく理解し、周囲が一丸となって支援することで、すべての人が安心して暮らせる社会を築くことができます。この記事を通じて、感覚統合についての理解が深まり、自閉症の方々をサポートする一助となれば幸いです。

自閉症の感覚特性に寄り添うために

自閉症の子どもたちは、私たちとは異なる感覚の世界で生きています。日常生活で当たり前に感じている音や光、匂いが、彼らにとっては大きなストレスになることがあります。一方で、その感覚の特性が新たな発見や創造につながる可能性も秘めています。

Sensokidsの絵本は、こうした感覚の違いを物語を通じて伝え、読者に「違いを理解し、尊重する」大切さを教えてくれる教材です。子どもたちの感覚世界を知ることは、彼らを支える第一歩。ぜひこの絵本を通じて、自閉症の子どもたちへの理解を深めてみませんか?
Sensokidsプロジェクトはこちら
https://camp-fire.jp/projects/797831/view

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