厚生労働省の統合医療サイトより、統合医療に含まれる以下の20の治療法を順番に解説しております。
①鍼治療(Acupuncture) ②抗酸化物質(Antioxidants)③アーユルヴェーダ医学(Ayurvedic Medicine)④カイロプラクティック(Chiropractic)⑤ホメオパシー(Homeopathy)⑥マッサージ療法(Massage Therapy)⑦瞑想(Meditation)⑧自然療法(Naturopathy)⑨経口プロバイオティクス(Oral Probiotics)⑩太極拳(Tai Chi)⑪ヨガ(Yoga)⑫脊椎マニピュレーション(Spinal Manipulation)⑬レイキ(霊気)(Reiki)⑭リラクゼーション法(Relaxation Techniques)⑮アロマセラピー(Aromatherapy)⑯催眠療法(Hypnosis)⑰気功(Qigong)⑱心身療法(Mind and Body Practices)⑲リフレクソロジー(Reflexology)⑳中国伝統医学(Traditional Chinese Medicine)
これらの治療法は、現代医学と組み合わせて使用され、患者の全体的な健康と福祉をサポートすることを目的としています。今回は⑱心身療法(Mind and Body Practices)についてご紹介します。
心身療法とは?
私たちの身体と心は、互いに密接に影響し合っています。ストレスで胃が痛くなったり、気持ちが明るくなると体も軽く感じたり――そんな経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。
近年、この「心と身体の関係」に注目した医療が世界中で注目されています。その一つが「心身療法(しんしんりょうほう/Mind and Body Practices)」です。代替医療や補完医療とともに用いられるケースが増えています。
心身療法は、その名の通り「心と体の相互作用」に着目したアプローチです。単に心のケアをする、身体の治療をする、というだけでなく、「心の状態を整えることで身体に良い影響を与え、身体を動かすことで心も癒される」という“つながり”を活かした療法です。
西洋医学的な医療と異なり、薬や手術を使わない方法も多く、自然治癒力や自己調整力を高めることを目的としています。慢性の痛みや不眠、ストレス性疾患、うつ状態、がん患者のQOL向上など、多くの分野で活用が始まっています。
どんな種類があるの?心身療法の代表例
心身療法にはさまざまな方法があります。ここでは厚生労働省も紹介している代表的な心身療法を紹介します。
① ヨガ(Yoga)
呼吸、瞑想、ストレッチ、ポーズなどを組み合わせ、身体と心のバランスを整える古代インド発祥の実践法。筋肉の柔軟性を高めるだけでなく、ストレス軽減や自律神経の調整にも効果があるとされます。
② 瞑想・マインドフルネス(Meditation / Mindfulness)
「今、ここ」に意識を向ける練習を通じて、思考の過剰な巡りを和らげ、心を安定させる手法です。集中力の向上、不安や抑うつ感の軽減、睡眠の質向上など、幅広い効果が報告されています。
③ 呼吸法(Breathing Exercises)
腹式呼吸、深呼吸、調息など、呼吸のコントロールによって自律神経のバランスを整える療法です。過呼吸や不安発作への対処法としても使われます。
④ 太極拳・気功(Tai Chi / Qigong)
ゆっくりとした動きと呼吸、意識の集中を組み合わせた身体技法。運動能力の維持、バランス感覚の向上、心身の調和を目的に行われ、特に高齢者の健康づくりにも用いられています。
⑤ バイオフィードバック(Biofeedback)
身体の状態(心拍、呼吸、筋肉の緊張など)をモニターで“見える化”することで、自分でそれをコントロールする方法。慢性痛やストレス性疾患の管理に用いられています。
⑥ 芸術療法(Art Therapy)
絵画や音楽、ダンスなどの表現を通じて心の内面を見つめ、自己理解や感情の整理につなげる療法です。言葉で表現するのが難しい子どもや、感情がうまく表せない人にも効果があるとされています。
医療・福祉現場での活用例
日本国内でも、心身療法は少しずつ医療や福祉の現場に取り入れられています。以下はその一例です。
- がん治療の補完療法:がんの疼痛緩和、抗がん剤治療中の不安軽減のために、マインドフルネスや呼吸法が導入されている医療機関もあります。
- 介護施設・リハビリテーション:認知症予防や、身体機能の維持を目的とした太極拳や気功が高齢者施設で実践されています。
- 発達障がい支援:自閉症スペクトラムなど感覚過敏を持つ子どもたちへの支援として、呼吸法やヨガ、アートセラピーが療育プログラムに組み込まれることもあります。
科学的エビデンスはあるの?
心身療法は、かつては「エビデンスに乏しい」「民間療法」と見なされてきた時代もありましたが、近年では多くの研究が行われ、科学的根拠が少しずつ積み上がっています。
特にマインドフルネス瞑想やヨガ、バイオフィードバックなどは、ストレスホルモン(コルチゾール)の低下や、脳波の安定化、睡眠の改善などをもたらすという研究結果が示されています。
厚生労働省も「統合医療」のなかでこれらの療法を紹介しており、適切な評価や研究を続けながら安全に取り入れることを推奨しています。
注意すべき点:万能ではない
心身療法は魅力的な療法ではありますが、「すべての病気を治す」万能な手段ではありません。あくまで補完的に活用されるものであり、医師の診断や薬物療法を否定するものではないことを理解することが大切です。
また、個々の体質や心理状態によって合う・合わないがありますので、専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。

まとめ:心と体をひとつとして捉える時代へ
心身療法は、「心と体を別々に扱う」のではなく、「一体のものとして整える」という考え方をベースにしています。
ストレス社会といわれる現代において、体だけでなく心も同時にケアするという視点は、ますます重要になっています。
医療現場でも、家庭でも、学校でも――
日々の暮らしの中に、ほんの少しでも心と身体の“調和”を取り戻す習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。